日別アーカイブ: 2025年9月18日

三重板金工業のよもやま話~“変遷”~

皆さんこんにちは。

三重板金工業の更新担当の中西です。

 

~“変遷”~

 

1|序章:屋根は「雨を防ぐ」から「暮らしを最適化する」へ

屋根板金の使命は、雨仕舞いと耐風・耐雪・耐久の確保。近年はそれに省エネ・太陽光発電・意匠・メンテ性が加わり、**“一次防水+二次防水+熱環境”**を統合する総合工事へ発展しました。


2|黎明期〜昭和前期:銅・ブリキ・杉皮からアスファルトルーフィングへ ⛏️

  • 素材:銅板・亜鉛めっき鋼板(ブリキ)・トタンが主流。

  • 下葺き:杉皮や和紙からアスファルトルーフィングへ。

  • 葺き方瓦棒葺きが全国で普及。加工しやすく軽量で、木造との相性が良いのが強み。

  • 課題:防錆・継手部の劣化、結露対策の不足。


3|高度成長期〜昭和後期:トタン全盛と標準化 📈

  • 折板屋根が工場・倉庫に爆発的に普及。大スパン・短工期を実現。

  • 役物標準化:棟包み・ケラバ・水切り・谷樋・雨押えなど、納まり図が一般化。

  • 施工管理:釘・傘釘・ナット留め中心。耐風設計はまだ経験則の領域が多い時代。

  • 課題:沿岸部の赤錆、経年での塗り替えサイクル短さ


4|平成前期:ガルバリウムと改質アスファルトで長寿命化へ 🧪

  • 素材革命ガルバリウム鋼板の普及で耐食性が大幅向上。フッ素樹脂塗装で褪色も低減。

  • 下葺き改質アスファルトルーフィングや粘着系シートが一般化し、二次防水が強化。

  • ディテール:**立平葺き(ハゼ締め)**が雨仕舞いと意匠で評価。

  • 安全:フルハーネス・仮設足場の整備が進み、墜落災害対策が制度化。


5|平成後期:耐風・耐震ニーズの高まり、意匠の多様化 🌪️

  • 台風被害の教訓から、ビスの引抜・ピッチ・座金の設計が厳格化。

  • 軽量化=耐震:金属屋根は瓦に比べ軽量で、屋根の重量軽減による耐震性向上が提案の切り札に。

  • 断熱:通気層・遮熱材・高断熱下地の組み合わせで夏涼しく冬暖かい屋根へ。

  • 意匠:フラットリブ、横葺きのシャープな見付けハゼを見せない納まりが人気。


6|令和:エネルギー・DX・カーボンニュートラル時代へ ⚡📱

  • 太陽光との一体化:架台ビスの貫通部に防水ブーツ・ブチル系の止水を併用、雨仕舞いの設計段階から統合

  • 高耐食鋼板(例:SGL系)やZAM系で沿岸・積雪地でも長寿命化。

  • DXドローン点検赤外線サーモで漏水起点の予測、BIM/CIMで納まり干渉チェック。

  • サステナブル:再塗装延命・役物交換・部分カバー工法で廃材抑制。LCC(ライフサイクルコスト)提案が主流に。


7|葺き方の変遷と“雨仕舞い”の思想 💧

時代 代表葺き方 強み 主要課題
昭和 瓦棒葺き 施工性・軽量 継手部の錆・止水ディテール
平成 立平葺き/横葺き 雨仕舞い・意匠 ハゼ部の施工品質管理
令和 立平フラット/折板ハゼ高耐食 耐風・長寿命・太陽光親和 付帯部の熱伸び/異種金属接触

ポイント:屋根は“表面材”より納まり(役物)で寿命が決まる。軒先・ケラバ・棟・谷・立上り・貫通部の一次止水+二次止水+排水経路を“重ね”で設計するのが近代板金の考え方です。


8|二次防水の進化:下葺き材が屋根寿命を左右する 🧻

  • 旧来:15kgルーフィング中心 → 現代:改質アスファルト・粘着・高耐久フェルト。

  • 粘着系はタッカー穴が自己修復しやすく、下地合板の動きに追従

  • 通気工法:野地合板の含水率管理+軒先吸気・棟排気で結露を抑制。


9|耐風・耐雪・耐火:地域仕様の標準化 🗺️

  • 海沿い:高耐食鋼板+絶縁テープで異種金属腐食を回避。

  • 多雪地:雪止めピッチ・谷樋断面・落雪配慮(隣地/歩道)。

  • 台風常襲ビス径・座金・ピッチの設計値化、ハゼ高の確保。

  • 準防火地域不燃認定の下地・通気経路設計、開口部延焼ラインの検討。


10|施工管理の変遷:経験値からデータへ 📊

  • :職人勘+紙の施工図。

  • 墨出しの写真記録トルク管理ビス本数の出来形管理雨仕舞い要所のチェックリスト化

  • 検査:ドローン俯瞰→気になる箇所を高所作業車で近接確認→引渡し前通水テスト


11|メンテサイクル:塗り替えから部分カバーまで 🔁

  • 再塗装:下地健全なら10〜15年目の再塗装で寿命延伸。

  • 役物交換:棟包み・ケラバの先行更新で漏水リスクを先取り低減。

  • カバー工法:既存屋根の上に新規金属屋根+通気層で工期短縮・廃材削減


12|“今”の提案トレンド(そのまま営業で使える要点)🗒️

  1. LCC提案:初期費用+再塗装+想定修繕を年額換算で提示。

  2. 断熱一体:屋根更新と同時に通気層+断熱材をセット化。

  3. 太陽光前提の納まり:将来設置を見据え、貫通部の受けを先仕込み。

  4. 沿岸・工場の高腐食環境SGL系・高耐食を標準指定。

  5. 点検パック:年1回のドローン点検+写真報告で安心の可視化


13|職人・道具のアップデート 🧰

  • 成形機:現場成形の立平・横葺きで継ぎ目レス化。

  • 締結:座金付ビスの座屈・シール座の選定基準が明確化。

  • 安全:フルハーネス・親綱・開口部先行養生が必須文化に。

  • 教育:新人は役物の名前と雨水の流れを最初に覚える。ディテール理解が品質を決める。


14|まとめ:次の10年に向けて 🚀

屋根板金工事は、

  • 素材の高耐久化(ガルバ→SGL等)、

  • 二次防水と通気の高度化

  • 耐風・耐雪の定量設計

  • DXによる点検と記録

  • 太陽光・断熱との統合
    で**“雨を防ぐ”から“暮らしの性能を設計する”工事**へと進化しました。

これからはLCCとカーボンニュートラルを軸に、地域条件×意匠×メンテ性を最適化する“屋根の総合提案力”が鍵。
現場は一枚の役物から。**水の動きを想像し、重ねを丁寧に。**それが最良の広告になります🌤️